プロデューサー シェーン・マクドネルが語る ケルティック・ウーマンの魅力と秘密
6年ぶりの来日公演まで待ちきれない!
あの透明でピュアな、心洗われる歌声。陽気に楽しませるフィドラーの演奏―
最新アルバム『ヴォイセズ・オブ・エンジェルズ』の話題も含め、
観客の胸を静かに、熱く、温めるケルティック・ウーマンの秘密から来日コンサートの見どころまで、今回のショー・プロデューサーであるシェーン・マクドネルにお話を聞きました。
―ケルティック・ウーマンは「クラシック音楽とアイルランドの伝統音楽の女性アーティストのアンサンブル」というコンセプトですが、このユニークなアイディアが生まれたきっかけは?
アイルランドの伝統音楽を何か別の形で広めたいという願い、そして、シンガーにとどまらずミュージシャンや作曲家も含め、アイルランド国内のさまざまな場所で活躍している並外れた才能の持ち主を紹介したいという思いから生まれました。「リバーダンス」がアイルランドの伝統ダンスを、今の若い世代を含め世界中の観客へ届けたように、アイルランドの伝統音楽も同じような注目を得たかったのです。 アイルランドの伝統音楽が持つ複雑かつ純粋な美は気付かれない時もありますが、名曲を奏でることによって小さなアイリッシュ・パブでも大きな会場であっても、十分に堪能できるものであることを証明しています。
―女性アーティストで結成されたグループですが、女性にフォーカスをあてた理由を教えて下さい。
アイルランド人女性の歌声は何よりも美しいことを知ってほしかったのです。同時に、コンサートを通じてアイルランド女性の強さと精神を表現したかった。彼女たちによって伝えられる純粋さや感情は、まさに私たちが表現したい音楽なのです。
―現在のメンバーについて、彼女たちの魅力や特徴を教えて下さい。
スーザンはメンバーに加わって5年になります。以前からロンドンのウェスト・エンド・シアターなどでリードボーカルを務めていたので、彼女はすでに知られた存在でした。私たちも彼女の抜群な歌唱力をよく理解していたので、彼女をメンバーに迎えることができて非常に嬉しかったです。彼女の声はとても音域が広く、どんな歌も情熱を込めて歌えるのです。
メアリードの魅力に注目したきっかけは、彼女が若い頃に契約していたイギリスの”Decca Records”を通じてでした。彼女はクラシックな素晴らしい声の持ち主で、私たちはケルティック・ウーマンのショーにぴったりう合う声だと思ったのです。歌の中で、特に難しいアレンジさえ難なくこなすだけでなく、フォークや伝統的な歌の歌詞一つ一つに込められた気持ちや純粋さを自然に汲み取って歌うことのできる才能を持っています。
エヴァは、彼女が初めて私達の前に現れた瞬間からメンバーに必要不可欠な存在だと分かりました。”シャン・ノース”スタイルと呼ばれる伴奏なしで歌われるアイルランド伝統の歌い方で育った彼女の声はとてもユニークで特徴的です。幼い頃から数々の伝統的なスタイルの歌の大会で優勝しています。彼女は、本物の伝統音楽をケルティック・ウーマンのショーに与えてくれます。
タラはメンバーに加わって1年ですが、彼女はいつも観客を圧巻のパフォーマンスで魅了します。伝統的な歌でも、クラシカルな曲でも、巧みに歌うことができ、情熱溢れるパフォーマンスを見せてくれます。また、ハープの演奏もできるので、またこの楽器をショーへ復活させることができ、私たちも非常に喜んでいます。
―ツアーやレコーディングによってその都度メンバーを組み直すのでしょうか?
ツアーやアルバムごとにメンバーを変えるわけではありません。自然の流れです。年間を通し、ほとんどをツアーに費やすので、それぞれ家族との時間が必要であったり、常に世界中を飛び回るのが難しい状況になったりするのです。しかしアイルランドには、たくさんの才能溢れるシンガーや演奏家がいて、とても恵まれた環境にあるので、世界のステージに向けて常に新しい才能を持った方を探し求めることができるのです。
―「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン」のようなヒット曲からアイルランドの伝統歌、聖歌まで、ジャンルという視点から見るととても幅広い選曲ですが、楽曲はどのような基準で選んでいますか? 特に重要視しているスタイルなどありますか?
私達のルーツであるアイルランドの音楽からはできるだけブレることのないようにしていますが、良い曲を聴いてケルティック・ウーマンで新たな表現ができるものだと感じたらレパートリーに迷わず加えます。「マイ・ハート・ウィル・ゴーン」は、そんな選曲を代表する現代的な曲の一つです。アイルランドの伝統曲とは少し違いますが、強い繋がりは感じられます。映画『タイタニック』のストーリーも原曲で使用されている楽器もアイリッシュ音楽の影響は確実にあります。ケルティック・ウーマンの他の曲との相性も良い曲だと思いました。
―ケルティック・ウーマンを聴いているとピュアで心洗われるような歌声、楽曲、メロディの素晴らしさに引き込まれます。「歌」の持つ力についてはどう思いますか?
誰かの心を感動させる歌声が持つパワーは、常に私を魅了し続け、インスパイアしてくれます。私たちは、観客がその歌の持つ意味や感情と真につながれるようなパフォーマンスができるよう励んでいます。特に歌い手の奏でるハーモニーの構成や工夫は慎重に行われ、それぞれがお互いを引き立たせています。
―クラシック音楽と様々なスタイルの音楽を融合させるアーティストがいますが、クラシック音楽とアイルランドの伝統音楽との相性はどのように感じていますか? 共通点などありますか?
音楽というのはジャンルに関わらずどこかで共通している部分があり、聴く人を楽しませるという芯の部分は同じだと思います。もちろんクラシカル音楽とアイルランドの伝統音楽は構成面で見れば大きな違いがありますが、どちらも同じ効果を持っており、聴く人の心に響く、感情を芽生えさせる力があります。
―現在アメリカ・ツアーの終盤を迎えていますが、アメリカ全国を回り大勢のファンを動員しました。ケルティック・ウーマンの世界的な成功の理由をどのように考えますか?
アイルランドの音楽や歌には世界中の人に共感される響きがあります。もちろん、世界各地に移民した大勢のアイルランドの子孫の影響もあると思います。しかし、日本人の作曲家の植松伸夫さんは「ケルト音楽には、聴いたことがない曲でも親しみやすい音楽性がある」と語っています。たとえアイルランドの音楽のルーツが存在していないところでも、その曲が持つ意味は、全世界に共通するものです。
―今回のアルバム『ヴォイセズ・オブ・エンジェルズ』の特徴と魅力を教えて下さい。
今回のアルバムが完成したことを非常に誇らしく思います。いくつかの曲は長年ケルティック・ウーマンが歌ってきた曲ですが、新たなアレンジを加え、アプローチに磨きをかける必要があると思いました。今回の新たなアレンジでは特にオーケストラの存在に重点を置き、同時にボーカルのパフォーマンスから感情がしっかりとオーディエンスに伝わるようにしました。この取り組みは成功し、思い描いたように達成することができたと思います。アイルランドの伝統的なサウンドとクラシックの名曲や現代の曲との境界線が少ない作品でとても好きです。
―9月の来日公演では、どんなところに注目して欲しいですか?
観客の皆さんが一曲ごとに、それぞれの曲が持つ要素と調和し、アイルランドの鼓動をコンサートを通して感じて欲しいです。実際にアイルランドに訪れたかのような感覚とそこにある心の温かさなどを、この公演を通して感じて頂ければと思います。