MINMI 10周年Tour
“雨のち虹” ~Rainbow after the rain~
2012.12,05 wed at Zepp DiverCity
open 18:00 / start 19:00
MINMIの愛と感謝が魅せる美しい”虹”の数々
歓喜と感動に包まれた10周年記念カーニバルがスタート!
横浜BLITZを皮切りに東京、名古屋、福岡、そしてまさに10周年最後の日である大晦日に地元・大阪でのファイナルを迎えるMINMIの10周年ツアー”雨のち虹~Rainbow after the rain~”。2012年8月にリリースされたベストアルバムのタイトルを冠したこのツアーは、12月5日、東京お台場にて2本目を迎えた。煌びやかに飾られた、それでいて大きくて温かい虹を目撃しに、いざZepp DiverCityへと足を踏み入れる。
この日は平日ということもあってか、若い層のお客さんが目立つ。グッと冷え込みが厳しくなった東京臨海エリアだが、会場内はTシャツ姿に首にはタオルという、みな一様に臨戦態勢のご様子でフロアはビッシリ埋まっている。開場明かりとしては少しハデめな、黄色、オレンジ、紫のムービングライトが場内を彩り、照らし出されるカップルや友達同士の女子グループ、若いママ達の表情にも、その期待度の高さが伺える。なんだか、その期待のジリジリ感で既に場内温度をゆっくりと上昇させているようにも。人間の愛すべき習性、お祝い好き。それが大好きな人の10周年ならば、なおさらだろう。間もなく開演時刻となり、現れたフロントアクトGOKIGEN SOUND(ゴキゲンサン)のステージで、それは充分に証明された。
MINMIの旧友であるGOKIGEN SOUNDは、「人生を楽しくする準備はいいですか?」のMCとともに、ひたすらアッパーに、お祭りムードを高めていく。おめでとうを連呼し、主役を迎える準備を呼びかけ、MINMIお約束のタオル回しをフライングで巻き起こし、場内を一瞬でヒートアップ。若旦那プロデュースの2ndアルバム『満タンで行こう!!』収録曲を含めた全4曲の短いステージとは思えない圧巻のパフォーマンスで、会場をギンギンに温めてMINMIへとつなぐ。
そしていよいよMINMIの登場だ! が。突如、雷鳴が轟く。ステージ間口いっぱいに張られた紗幕には、身を切るような冷たい冬の雨、そんな描写が投影され、お祝いとはほど遠い演出から始まった。あたかも彼女が作り出した物語の世界に引き込まれたかのような感覚に包まれる。
そして舞台は、雨をしのいで迷い込んだサーカス小屋から始まる。
軽やかで澄んだピアノのイントロが鳴り響き、サーカス一座の座長のような、シルクハットにステッキを携えたMINMIが大歓声を浴びながら登場! 1曲目は「太陽の下で」。ごくごくシンプルな音数で、優しく弾むようなMINMIの歌声がリードするポップナンバー、そして2曲目「マカナ」への間髪入れずのつなぎでは、「みんなの翼を広げて自由になろうよ!」と空気を裂くように一声。徐々にラテンのビートへと回転速度を上げていき、序盤を一気にメドレーで披露していく。4曲目「Lotta Love」では、会場2000人超のジャンプにフロア全体が大海原のごとくうねり、既に圧巻の熱波を作り出したかと思えば、5曲目H20のカヴァー「想い出がいっぱい」では2000人の大合唱が胸の奥底を共振させる。10周年というお祭りムードも手伝ってか、開始15分でクライマックスかのような一体感だ。
そして、明け透けな関西弁で会場を沸かすMINMIのMCもライブの醍醐味のひとつ。「今日はみんなの笑顔も涙も全部いただきます。全部放出して帰れよ。全部のエネルギーをちょうだいよ! まずは日頃の鬱憤を晴らしたいと思い………なんなん?って言いたくなることあるやん?」と、ここで勘の良いファンから歓声が上がる。この日のお祭りに華(?)を添える、本日のゲスト一人目、KENTY GROSSを迎えての「平成の乙女」だ。ステージにマッチしたサーカス小屋的なフレンチカフェミュージックの風合いも感じさせるジャジーなサウンドと、関西夫婦漫才の融合ともゆうべきコミカルなナンバーで会場を大いに沸かせる。さらには曲が終わってもとどまる所を知らぬ二人の芸人的手腕。そのあとのKENTY GROSSの調子に乗り過ぎたステージは、是非とも会場で体感していただきたかった・・・腹ヨジレます。
そして2人揃っての「サマータイム!!」で、会場は前半の大きな山を迎える。この曲はSOCA(ソカ)のアプローチを取り入れるきっかけとなったヒットナンバー。同ジャンル発祥の地であるトリダード・トバゴでも反響を呼び、現地フェスに招かれたり、「SOCA AWARD」に日本人としてノミネートされるなど、MINMIのアーティスト性により一層の奥行きをもたらした楽曲と言っても過言ではない。そんなアーティストとしての確固たるパフォーマンス、そこにお祭りムードをまとったエンターテイメント要素がふんだんに盛り込まれる。アレンジされた歌詞、フロア全体を彩るタオルの乱舞とお約束の「メッチャヤバイ」コール、これでもか!と、会場を沸かし続ける。
見所、沸き所満載のステージが時の経過を加速させ、気付けば早くも中盤である。ここからはMINMIのデビュー10年の軌跡を辿っていく。「The Perfect Vison」でスタートラインに立った2002年、そこから夢に向かう決意とそれに伴う不安、そして突き進むために背中を押してくれた力の数々を、”MINMI”の綴りになぞらえ、その思いを封じ込めた楽曲に乗せて披露していく。
「私は、みんなのそのままの笑顔や涙、そのままの顔を見たいねんな。ナチュラルでいることはソフトなだけやない、勇気がいる。でも私は、ナチュラルな私のまんま、この先見えるものが見てみたい。そしてナチュラルのまんまの私のそばに居てくれて、私の音楽を愛してくれたり、私と友達でいてくれるみんなを本当に誇りに思ってる」
楽曲ととも吐き出される言葉の数々が多くのファンに心に突き刺さり、涙を隠そうともせずジンと心を温める人も多数いたようだ。真っすぐなMINMIの人柄、そしてその小さな身体からにじみ出る大きな愛情が伝わる一幕だった。
そんな、しっとりと会場を包み込んだ優しい空気だったが、なぜか突如訪れたモノマネ大会を経て(笑)、そして脱線しまくりの客イジリを経て(笑)、ライブ本編は佳境へと差し掛かる。ここでは「アベマリア」や「ハイビスカス」といったヒットシングルが目白押しで、ファンは歌声とダンスに熱気を乗せて凄まじいエネルギーを発している。ステージを華やかに彩るダンサー、コーラス隊やバンドも、パフォーマー全員が心から楽しんでるようなステージングが垣間見れて、本編は幕を閉じる。
演者がステージを後にしダウンライトになると、どこからともなく”I Love You Love You Love You MINMI”という歌声が。「I Love You Baby」の替え歌だ。すぐに会場全体に飛び火し、2000人の合唱が巻き起こる。MINMIのライブはファンのアクションもまた魅力の一つであり、ライブを支える重要なエッセンスである。そんなことを痛感しながら歌声の波に酔いしれていると、美しい女性コーラスのハーモニーが。ファンの歌声に対するMINMIからのアンサーソング的な「真夏のオリオン」でアンコールがスタートする。
2人目のゲストJAY’EDも登場し、「雨のち晴れ」でMINMIとの甘いボーカルでの掛け合いを存分に披露。MINMIはカジュアルなTシャツ姿でより親近感を増し、フロアとの交流もよりフランクになる。そして会場からの「HAPPY BIRTHDAY」の合唱に「ヤバイ!」と声を震わせながら応える一幕も。しかし、そんな親近感たっぷりのナニワの歌姫というのが本来の姿であり、だからこそ逆に歌う時のパワーに圧倒されたりもするのだ。アンコールでは2012年12月19日にリリースされた新曲「エンゲージリング」の披露を含め全5曲。最後に相応しいヒットナンバー「シャナナ☆」で最高のお祭りのシメを飾った。
この日、最後の曲の前に、まずはファンに向かって何度も「ありがとう!」と叫び、そして共にステージに立つメンバー、コンサートスタッフ、マネージメントスタッフ、レーベルスタッフなどに対しても、途中涙ぐみながら、それを笑いで誤摩化し、可能な限り名前を挙げて「ありがとう」を伝えた。10年に渡り人を魅きつける根底には、その燦々と輝く彼女の人柄というのも大きな要素だろう。誰かに伝えるためにアーティスト性を磨き、誰かに楽しんでもらうためにエンターテイメントを試行錯誤する。そんな愛情が形となったような、心のこもった素晴らしい一夜だった。
[TEXT by 大島サトル ]
[PHOTO by Wataru Umeda]