Hoobastank JAPAN TOUR 2014
2014.11.27 thu at 新木場 STUDIO COAST
Open 18:00 / Start 19:00
パイオニアとして賞賛を浴び続け、
ミクスチャーロックの第一線をひた走り続ける理由がここに!
約2年ぶりに実現したジャパン・ツアーだ。この日は早々にソールドアウトを果たしており、スモークに覆われたステージ上に3人のシルエットが登場すると、当然のように巻き起こる歓喜の声。そんな中、おもむろにしゃがんだギターのダン・エストリンは、手動でエフェクターをコントロールしながら、サイケデリックでカオティックなサウンドの壁を構築し、会場内に充満していた歓喜をピリッとした緊張へと塗り替える。
この日はオープニング・アクトの”COUNT LOST”、そして今や日本を代表するモンスター・バンドに成長した”ONE OK ROCK”という2バンドがゲスト・アクトを務めたわけだが、フーバスタンクへのリスペストが伝わる、非常にウェルカムなムードに満ちた流れから”Hoobastank”へのバトンタッチだった。
そんなムードを一新するかのように、緊張感と、そして何かが始まるという期待感をピークまで高める。そこから繰り出された切れ味鋭い頭打ちのビート、1曲目は『JUST ONE』だ。某ビールメーカーがCMに起用したことで日本でも広くお馴染みとなった人気曲である。緊張は改めて歓喜に、そして歓喜は狂気を帯びた盛り上がりへと急速な変貌を遂げていく。ド頭一発で2500個の心臓をわしづかみにし、フーバスタンクのジャパン・ツアー最終日が幕を開けた。
続く『LET IT OUT』、そして一昨年にリリースされた現時点での最新作[ファイト・オア・フライト]から『NO DESTINATION(fight or flight)』は、どちらも内臓をビリビリ震わすヘヴィ・ボトム、そして重厚なアフター・ビートにフロア全体がストンプし、その壮観さと熱く勇ましいダグラス・ロブの歌メロが相まって、またさらに胸を高ぶらせていく。
そんな冒頭だったが、畳み掛けはまだ終わらない。というのも、ここまでの3曲中2曲は彼らが世界的にブレイクを果たしたアルバム[ザ・リーズン]からの選曲で、さらにもう一発トドメ。イントロのアルペジオと共にひと際大きな歓声が巻き起こる。同作品の1曲目を飾った『SAME DIRECTION』だ!ったのだが…、まさかのサビ前で突如のギタートラブル発生!! ギターの音が出ない。曲は進行していく。対処にアワ吹くスタッフ。これが体感時間にすると結構のものだったのだが、ダン・エストリンも苛立ちをあらわにギターを換え、丸一周して2回目サビ前で間一髪のギターIN! もちろん不幸なトラブルではあるのだが、復活したタイミングがあまりにも見事だったので、僕は逆に上がってしまった。フロアも同様な様子で、それまでを取り返すかのような盛り上がりを見せ、サビを合唱し、会場の熱量はさらにさらに上昇していく。
大阪・梅田AKASOを初日に、東京・新木場STUDIO COASTでの2デイズと、3連チャンでの非常にタイトなツアーだったが、疲れなど微塵も感じさせないメンバー。ヴォーカルのダグラス・ロブに至っては、リズム隊の猛烈なLOW感を突き破るかのように、時に熱く伸びやかに、時に鋭いシャウトを轟かせ、その圧倒的な表現力をいかんなく発揮している。モジュレーションを駆使した美しいギターの旋律が特徴的な「IF I WERE YOU」は、ここまでのメニューの流れに大きな緩急を作り出すミディアム・ナンバー。ファルセットも織り交ぜた見事なヴォーカリゼイションで、会場を壮大かつ清々しい楽曲の世界感に包み込んでいく。
同曲をきっかけにライブ中盤に突入すると、序盤の無骨な押しまくりグルーヴから、サウンドは徐々により一層の幅を見せ始めていく。前作[フォーネヴァー]、前々作[欲望]の楽曲を中心に、多彩なサウンド・ヴァリエーションと楽曲構成でドラマティックな展開を描き出す。フーバスタンクというバンドの独自性を見せつける、圧倒的な表現力の高さと振り幅が冴え渡る。『DON’T THINK I LOVE YOU』では、原始的なイナタさをもった強靭なボトムの上で、空間系を駆使したギターが自由かつ無限の広がりを響かせ、そこに絡み合う歌は美しいメロディの稜線を力強く描き出す。続く『ALL ABOUT YOU』『BORN TO LEAD』、そこからの流れでも全く違和感のないメジャー・デビュー作[フーバスタンク]からの『RUNNING AWAY』。彼らのアンサンブルの妙は会場の隅々まで行き渡り、観客は時にストンプで、時にハンドクラップで、時に合唱で応える。応えるというか、もはやそこに意志はなく、自然と彼らのパフォーマンスと一体になっている感じ。そのレスポンスに、ダグラス・ロブは「ドウモアリガトウゴザイマス! Beautiful!」と達者なイントネーションで言葉を挟む(※ちなみにダグラス・ロブは日本人の母を持つ日系アメリカ人)。狂乱のピークはひたすら持続し、16分のカッティングが腰に来るダンサブルな『MY TURN』でさらに徹底的に。女性客には「♪ウォ~オオ~」、男性客には「When’s gonna be my turn!」と、それぞれにコーラスの役割を与え、より会場に確固たる一体感を、かつライブに参加する楽しさに観客を引き込んでいく。
気づけばライブは本編終盤である。ここに来て、ほぼ全編に渡ってファルセットを絡める歌唱の『THE FIRST OF ME』だが、そのダグラス・ロブの高音の艶やかさは変わらない。楽曲やその表現力という面だけでなく、先に述べた”ライブ”という意味合いにおいても、改めてフーバスタンクというバンドのパフォーマンスのクオリティに脱帽した。この日はツアー最終日ということもあってか、当初からメンバーは肩の力が抜けた印象だったのだが、それは良い意味でのラフさをプレイに感じさせていた。ラフというのは語弊があるかもしれないが、もちろん決して粗いというのではない。キッチリ決め込む部分よりも、もっと動物的というか直感的な部分が際立っていた。その目に見える柔軟な瞬発力は、そのまま緩急のメリハリといった部分に繋がり、それはロックに、もっと言えば彼らの血に根付いたロックンロールになくてはならないダイナミクスへと繋がっていく。そんなメリハリはメニュー構成においても一貫していて、美しく幻想的な『THE FIRST OF ME』のエンディングから一転、またここで[フーバスタンク]からラウドでリズミックな『PIECES』。その強靭な熱量で、会場を再煮沸する。フロアはクラウド・サーファー続出のベルトコンベア状態で、瞬く間に沸点へと達するのだ。
ここまで約1時間、初めてMCにそこそこの時間を割いてリラックスした表情を見せるメンバー。(おそらく)たわいもないトークを挟んで、ギターから紡ぎ出されたイントロは大名曲にして最大のヒットシングル曲『THE REASON』。シンプルなサウンドは哀愁をはらんだ清々しいメロディをクッキリと浮き立たせる。鳥肌である。”楽しい…とっても楽しい。本当に”とダグラス・ロブ。
そして心暖まるひと時に満たされた空間を切り裂くかのような鋭いビートIN、本編最後は最新作から『THIS IS GONNA HURT』だ。一音一音の殺傷能力が猛烈なリズムワークにエッジーなギターリフをぶつけて、立体的なリズム・アンサンブルを構築、というか暴発させる。シャウトとメロディアスなヴォーカル、さらには巧みなコーラスワークも織り交ぜ、生み出された最強の音塊をブン投げてくる。
1時間10分ほどにて本編を終え、インターバルもそこそこにアンコールに応え再登場。密度の高いブーミーなギターのひと吠えから繰り出されたのはアルバム[The Reason]から『OUT OF CONTROL』。裏打ちのバッキングによる導入に、鬼気迫るシャウトも盛り込んだキャッチーなリズム・アンサンブル、そして熱くメロディアスなヴォーカル・パートと、構成的にもツボが満載のこの曲。その熱狂は言うまでもない。フロアからの放たれる掛け合いコーラスがステージとの垣根を取っ払い、会場全体引っ括めてひとつのSHOWと化す。その沸点を高くキープしたまま続く『INSIDE OF YOU』では血がたぎるような勇壮なメロディに、男気全開のこれまた勇ましいビッグ・グルーヴ、野生のダンス・ナンバーにフロア全体が渦を巻き、拳の荒波がうねり狂う。「来いよ! もっと声を聞かせろ、東京!」という煽りと共にオーラス『CRAWLING IN THE DARK』。ドラム、ベース、ギターは、高密度に圧縮した熱量を一気に全方位に放射するようにリミッターを外し、そのド真ん中を貫いてオーディエンスのハートを射抜くダグラス・ロブの声と歌。最大の爆発力をもって2014年のフーバスタンクのジャパン・ツアーは幕を閉じた。終了後もしばらくステージに残り、時間をかけて観客にサービスする姿に微笑ましい気持ちになりながらも、しばしの間、彼らの爆発力の余波は続き、胸を奥をチリつかせていた。
2001年のメジャー・デビュー・アルバムから、2012年にリリースされた現時点での最新作アルバムまで、バランス良く、そしてどれもが強烈なインパクトを放つ楽曲で構成されたこの日のメニュー。改めて気づかされたのは時代を問わず彼らの楽曲には一貫しているものがあるということ。それは特にライブで顕著になるのだが、やはりあくまでも人間的な躍動感に溢れた感情であり、それを圧倒的に高い次元で表現できるということだろう。ミクスチャーロックと分類されるジャンルであれば、その表現手法もサウンドも必然的に多彩になる。それは同時にエフェクターをはじめする機材武装を先行させがちだが、フーバスタンクにとってのその辺はあくまでもツールでしかなく、あくまでも各メンバーの心と脳みそに支配される部分が非常に大きいように感じる。だからこそプレイはより立体的に、人間的に、そしてそこからもたらされるサウンドや楽曲は、より足腰を揺らし心に突き刺さるのではないか。そこに彼らがパイオニアとしていまだ賞賛を浴び続け、ミクスチャーロックの第一線をひた走り続けている理由があるように思う。というわけで、そんな堅苦しい言葉の武装も彼らには相応しくない。燃えた! 踊った! やっぱライブがヤツらの醍醐味だ!
[TEXT by 大島サトル ]
[PHOTO by RYOTA MORI]