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LIVE REPORT

栄喜

栄喜道Ⅲ

2018.10.7 sun. TSUTAYA O-WEST
open 16:15/start 17:00
Special Guest / KAZUMA
Band Member / Guitar : 小川 大介 / Guitar : 土屋浩一 / Bass : NATCHIN / Drums : YOUTH-K!!! / Violin : 桜井雅彦

栄喜、KAZUMA、NATCHIN、3人のメンバーが揃った
SIAM SHADE楽曲だけのスペシャル・ライブ!!

暦の上では…といった言い回しが無意味になりつつある昨今ではあるが、10月初旬の東京で最高気温32℃は、さすがに誰かのせいにでもしたくなるほどの暑さだ。そのターゲットに、まさに適任の熱血漢、栄喜。言わずと知れた元SIAM SHADEのヴォーカリストである彼は、10/6にニューシングル『Dying to live』をリリースするなど、ソロ・アーティストとして現在も精力的に活動中(ギタリストK-A-Zとのユニット=DETROXとしてもライブ等を展開)。
今回、10/6(木)・7(金)の2日間に渡って行なわれたライブ[栄喜道 Ⅲ]は、全曲をSIAM SHADE時代の楽曲で構成するという、特に昔からのファンにはたまらない企画だ。それも、事前に自らのブログからファンに聴きたい曲への投票を募り、人気上位曲のみを選んだという、本人曰く“SIAM SHADEをこよなく愛するみんなで作る2DAYS!!”。

チケット発売早々にソールドアウトとなっていた2日目の会場では、ギッシリ超満員のフロア、そのあちらこちらでSIAM SHADEの懐かしいTシャツが目に入る。開演前から高揚した雰囲気の会場には、彼の言う通りSIAM SHADE愛が満ち溢れきっていた。
開演となり、SEが響くと、一瞬でフロアが大歓声に沸く。『PASSION』イントロでの攻撃的なギターリフが着火の合図だ。

赤いマイクを握り、ステージ中央に立つ栄喜の向かって右側(上手)には、もちろん以前からサポート・ベーシストを務めているNATCHIN(ex.SIAM SHADE)の姿も。少し喉を絞るように、サビのメロディをシャウトする栄喜。間髪入れずに繰り出された『CAN’T FORGET YOU』では、さらなるスピード感で刹那的なメロディーが疾走し、会場中が激しく揺れる。ハードなバンド・サウンドにバイオリンの音色が高尚な雰囲気を添えている点が、SIAM SHADEのそれとはまた違った触感を生み出しており、新鮮に感じる。
「楽しい? 最高だね、SIAM SHADE! 今日はもう本当、みんなで楽しもう!」
グルーヴィなミディアムテンポの『警告』から、爽快なポップ・ロック・チューン『Dazed and Alone』、切ないムードがメロディックに展開する『CALLING』と、目まぐるしくシーンが移り変わる。独特の張りときめ細かい質感を持った栄喜の声が響くキャッチーな歌メロ。いつもそれを中心に据えつつ、楽曲ごと実にさまざまなイメージが広がる多様性も、SIAM SHADEの音楽の特長であったと、改めて実感するところだ。

サポート・バンドのメンバー紹介を挟みつつ、一緒に歌うよう、オーディエンスを煽る栄喜。
「よく“俺のとなりの人がスゲェ音痴なんだけどデケェ声で歌ってて、栄喜の声、聞こえなかったよ〜”なんて人いますけど、今日はもういいです、そういうの! 我慢してください(笑)!」
そう言って客席からの大合唱を誘った『Dear…』、そして『素顔のままで』。“LOVE ME, KILL ME, TAKE ME”のコーラスでは、誰もが歌声とともに指を立てた両手を天に向けて掲げる。あの頃と同じように、だ。印象的なベースのフレーズからポップでポジティヴな『RISK』に流れ込んだあとは、切なげなピアノの音色とバイオリン、ベースが絡むイントロから名バラード『Tears I Cried』を、会場の広さを増幅させるほど、ダイナミックかつドラマチックに聴かせた。

ついにここでステージに、スペシャルなゲストが呼び込まれる。そう…SIAM SHADEメンバーがもう一人、KAZUMA(遠藤一馬)だ!
客席からのKAZUMAコール、そして盟友=栄喜のステージにゲストとして登場するというこのシチュエーションに、「嬉しいけど、照れるね…」と笑ってみせるKAZUMA。
NATCHINからは「ふと思ったんだけど、(この3人は)HOT WAVE仲間だよね…」のひと言。栄喜のトークは、彼らがまだ高校生だった頃、SIAM SHADE結成前にそれぞれ出場したバンドコンテストでの出会いから、当時のKAZUMAの高校生離れしたロック・ファッションの話題へと展開し、会場が笑いに包まれた。

栄喜そしてKAZUMA 、2人のヴォーカルをフルに活かし、バラード『誰かの気持ちを考えたことがありますか?』から『if 〜ひとりごと〜』へ。演奏テクニックや楽曲クオリティの高さもさることながら、ツイン・ヴォーカルという独特のバンド・スタイルから生まれるさまざまな要素が、SIAM SHADEをSIAM SHADEたらしめる個性となっていたことに、誰も異論はないだろう。ヴォーカル・スタイルは2人それぞれだが、絶妙なマッチングのハーモニーや掛け合いに、やっぱりこれだ!と思わせる安定感、安心感が滲んでいる。栄喜が歌詞を忘れてごまかした部分だって、ちょっとしたご愛嬌。彼自身も「SIAM SHADEの曲やると、なんか落ち着くね!」と、満面の笑顔を見せる。
『LOVESICK 〜you don’t know〜』のサビでは、2人のハーモニーに加えて客席からも重厚なコーラスが響き渡る。このときこそ間違いなく3/5(人)以上にSIAM SHADEのステージだった。ここでKAZUMAはいったんステージを去る。

「今日、ここがピークじゃなきゃいいね」と笑う栄喜。そう、彼のライブはまだ終盤を残している。ファンを激しく煽って奮い立たせると、NATCHINがウネるようなベース・フレーズを弾き出す。快い激しさで客席を揺らす『ブランコ』から『Shangri-la』への流れは、ロック・バンドSIAM SHADEの真骨頂といったイメージ。そして、ステージが進むごとにどんどん高音が伸びるようになってきた栄喜のヴォーカルが、本編ラストの『MOON』では、この夜一番と言っていいほどパワフルに響き渡っていた。
客席からアンコールの声が上がるとすぐにステージに戻ってきたメンバー。もちろんKAZUMAも再び呼び込まれた。この日KAZUMAが手にしていたギターはアコースティック・ギター。SIAM SHADEのステージではもちろんエレクトリック・ギターを手にしていることがほとんどだったが、今回はあくまでゲスト・ボーカル&コーラスといった役回りと考えたのだろう。リハーサルにKAZUMAがアコギを手にして現れたこと…いや、むしろリハにKAZUMAが現れたこと自体に驚いたという栄喜の話で、会場は笑いに包まれる。
「じゃあ、あの曲を一緒に行きますか!」
そう言って始まったのは、ドラマ主題歌にもなった1999年リリース、10枚目のヒット・シングル曲『曇りのち晴れ』。アメリカン・ロックを彷彿とさせる乾いたギター・サウンドと、2人のコンビネーションによって成立するヴォーカルが、実にキャッチーで印象深い。もちろん懐かしさもあるが、まったく色褪せないこの曲の心地良いイメージ、いまなお伸び伸びとした歌声に、思わず体を揺らされる。そして何と言ってもバンド史上最大のヒット・シングル『1/3の純情な感情』。1997年のリリースから時代やシーンを象徴する1曲として幅広く親しまれ、その後も数多くのアーティストがカヴァーしたこの曲。誰もが認めるSIAM SHADEの代表曲だ。客席もステージ上も、歓喜の表情に満ち溢れている。
ラストに、最強のヘドバン・チューン『Don’t Tell Lies』を持ってきたところまで含め、ファンがこのライブに何を期待したか、栄喜はすべてわかっていたと思う。なぜなら栄喜自身が、客席のオーディエンスと同じか、それ以上のSIAM SHADEファンであるから。それが、このライブを通して一番印象に残ったことだ。昔の恋人に会うような嬉しさとドキドキ感、そしてどこか少し切なさのような気持ちも見え隠れしていた気がするのは、僕だけだろうか。

[TEXT by SATOSHI FUSHIMI]
[PHOTO by SOSHI SETANI]


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