ブルーノ・マーズ
ベスト・オブ・ブルーノ・マーズ ライブat 東京ドーム
2024.1.16 TUE at 東京ドーム
open 17:00 / start 19:00
東京ドーム7夜を完全制覇
超一級エンターテインメントとサービス精神で
老若男女が歌って踊って満面笑みに♪
2022年10月以来、約15カ月ぶりに来日公演を敢行したブルーノ・マーズ。前回の公演では、開催までわずか1カ月余りという緊急開催だったにも関わらず、大阪2デイズと東京3デイズを即完売。急遽、東京公演が追加されたものの、それも即刻ソールドアウト。ドーム5公演が史上最速ソールドアウトの記録を樹立した。しかし、それにも勝る勢いの今回。なんと東京ドームでの5日間のチケットがまたもや即完し、さらに追加された2公演も即完売。ステージセット確定後に販売された追加席もすぐさま売り切れて、最終的には東京ドーム全7日間のチケットが完全ソールドアウト状態で臨む日本ツアーとなった。しかも渋谷ではブルーノとハローキティによるコラボグッズのPOP-UP STOREが開設され、原宿のフェンダー旗艦店ではブルーノ愛用のシグネイチャーギターをフィーチャーしたPOP-UPキャンペーンも実施。もはや東京は、いや日本列島がブルーノ祭りといった様相だ。海外アーティストによる来日公演が、これほど一般的にも大きく広がりを見せ、皆から認識されているのは珍しくもあり、改めてブルーノの幅広い人気を伺わせた。
そのブルーノ人気の裾根の広さを目の当たりにしたのが、東京ドームの会場だ。筆者が観たのは1月16日(火)の4夜目のライブだったが、平日にも関わらず、そこにはかなり高齢と思しき方々から、若者集団、カップル、学生、ビジネスマンや、幼い子連れの親子まで、それこそ老若男女という表現がピッタリな多様な客層がひしめいていた。レイクサイドやタワー・オブ・パワーなど、こってりしたファンクが流れる会場には、開演前からまるでテーマパークを訪れたかのような高揚感が渦巻いていた。
予定時刻のほぼ19時に、会場全体が明るく照らされ、ムーディが音楽が流れ始めると、いよいよショーの始まりだ。舞台を覆っていた垂れ幕が解き放たれると『24K・マジック』でスタート。いきなりギンギラの別世界が出現する。カラフルなライティングにレーザー光線、ひっきりなしに打ち上げられる火花や大砲。その全てに度肝を抜かれながら、気づけば誰もが歓声を上げている。ブルーノは歌って踊って、ステップを踏みながら、我々を彼の世界へと誘ってくれる。バックバンドのフーリガンズの8人も、演奏したり歌いながら、ピシッとダンスを決めまくる。オープニング曲が終わると「タダイマ、トウキョウ!」と、まずは日本語で挨拶。その後、「イチ、ニイ、サン、シイ、今夜は4日目。1日目は特別なショーだった。2日目は凄くラウドだったよ。3日目はこれまでで最高にラウドなショー。そして今夜は更に一番ラウドなショーになることを願っているよ!」と煽ってオーディエンスを盛り上げる。
その後、『フィネス』、『トレジャー』など煌びやかなアッパー系を続けて、まずはとことん踊らせ開放感を漲らせる。そこから『リカー・ストアー・ブルース』や『ビリオネア』といったダンスホールレゲエ調へと移行して、ギターやホーンセクションの音色で魅入らせる。ミュージシャンとしての力量もたっぷり見せつける。かと思えば、『パーマ』ではマイケル・ジャクソンの再来かと思わせるほどクールなダンスで圧倒し、『ヴェルサーチ・オン・ザ・フロア』では、じっくりイントロからじらせてから、会場中がスマホライトで照らされる中、夢見心地なロマンチックなムードで酔わせてくれた。
日本に対するスペシャルな配慮も盛り沢山だ。『チャンキー』では“Japanese Girls Get Up”と歌って歌詞を映し出したり、『イット・ウィル・レイン』では、バックのアニメ映像に富士山や日の丸を登場させ、「アイシテマス!」の掛け声でスタートした『マリー・ユー』に至っては、途中からAKBの『ヘビーローテーション』を歌って驚かせ、オーディエンスを歓喜の渦に巻き込んだ。キーボード奏者によるソロでも、宇多田ヒカルの『First Love』が演奏されると、それにオーディエンスが合唱で応えるなど、日本ならではの瞬間が続出した(日によっては米津玄師の『Lemon』が演奏された)。
中盤からのハイライトは、何と言っても『ラナウェイ・ベイビー』だ。オーディエンスとの掛け合いから、ジェームス・ブラウンを彷彿とさせるファンキーなダンスまで、次から次へと見せ場を作って観客を煽っては突き放し、皆を惹きつける。前回と同様、大きなドームがひとつになった瞬間だった。
ピアノの弾き語りメドレーのセクションでは、今回は「ブルーノのカラオケ」と題された、オーディエンスと彼がカラオケのポイントを競うという趣向で進行した。英語的な「カラオキ」ではなく、きちんと「カラオケ」という発音だったのにも感心。またオーディエンスの方も、『ナッシン・オン・ユー』などの歌詞を、しっかり歌えていたのにも感心させられた。ひと際ロマンチックに歌い上げられた『リーヴ・ザ・ドア・オープン』では、セクシーな歌詞に合わせて、日本語で「ブルーノ、イキマス!」と叫んだり、「トウキョウ、ニッポンイチ!」と言って愛嬌たっぷり。サービス精神が止まらない。
そして終盤は、キーボード演奏だけをバックにした『君がいたあの頃に』でうっとり美声を聴かせ、『ロックド・アウト・オブ・ヘヴン』でドーム全体をピョンピョン飛び跳ねさせ、ゴールドの紙吹雪が降り注ぐディスコに早変わり。シンプルに歌われた『ジャスト・ザ・ウェイ・ユー・アー』では、大合唱が巻き起こり、アンコールの『アップタウン・ファンク』は、もちろん最後は炎に包まれ、消防士が登場するという鉄板の展開だ。数多くのステージを踏んできたブルーノならではの完成度の高さで圧倒する。一緒に歌って踊って、次々と繰り広げられた超一級のエンターテインメントは、アトラクションやライドを楽しんだかのような爽快な気分と充実感を残してくれた。ここまで、とことんやってくれれば、誰もが大満足。全員がニコニコ笑顔で帰宅の途に着いたに違いない。前回に続いてまたもやエンタメ王=キングとしての実力を見せつけられた。
■クレジット
TEXT by 村上ひさし
PHOTOS by Daniel Ramos, Soshi Setani