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LIVE REPORT

魔法少女になり隊

魔法少女になり隊ワンマンツアー ~まだ知らぬ勇者たちへ~

2018.1.28 sun 東京 TSUTAYA O-EAST
open 17:30 / start 18:30

視聴覚を刺激するRPG系バンドの世界
ひたすらファンを楽しませる無限宝箱!

日本中がすっぽり寒波に包み込まれ、残雪のこる東京・渋谷の冬景色。が、縮こまりながら道玄坂を登って行けば、会場周辺にはまさかのTシャツ姿がチラホラと…胸や背中には“魔法少女になり隊”の文字やグラフィックが踊る。早すぎた戦闘態勢に震えながらも、表情もテンションも皆一様にアッパーな様子だ。魔法少女になり隊にとって初の大舞台TSUTAYA O-EASTワンマン。その祭典に、開場前から逸るファンの想いが街に溢れだしていた。
見事にソールドアウトを果たし、観客でギッシリ埋まったフロアの先には、1stアルバム[魔法少女になり隊~まだ知らぬ勇者たちへ~]のジャケットで使われているRPG系バンドロゴが堂々の貫禄で投映されている。またフロアの両サイドには、これまたRPG系アプローチの掲示で、“いのちだいじにエリア”が設けられていた。映像引っ括めてのエンターテイメントが魔法少女になり隊のライブスタイルなだけに、VJ / Vo担当のgariが創り出す映像の世界観をじっくり観たい人に向けて、また自分のペースでゆっくりライブを観たい人に向けて、という思いやりエリアだ。だがこれすなわち、フロアが熱狂の渦と化すことを見越してのセーフティエリアである。様々な期待が駆け巡る“RPG系バンド”の何たるかを匂わせつつ、暗転とともにオープニグ映像が流れ始めた。

懐かしき8bitゲームのドット絵で展開されるオープニング映像は、オーディエンスを“まだ知らぬ勇者たち”、メンバーを冒険のパーティとし、協力して敵キャラ“うごく犬のぞう”(渋谷駅前の犬に似てる)を倒すというもの。映像が展開するごとに、やいやいとノリの良すぎる反応を見せるオーディエンスたち。バンドが愛されているのと同時に、集いしファンの熱量の高さを見せつける。バンドにとっては心強い、まさに勇者のような存在だろう。そしていよいよとなったライブの開始、勇者たちはモンスターの咆哮のような歓声を沸き立たせ、メンバーを迎え入れた。

凄まじい音量でオーディエンスの「オイ!オイ!」の掛け合いが響き渡る中を、悠々と登場した“魔法少女見習い”のボーカリスト火寺バジル。魔法のマイクのおかげで歌うことはできても、魔女の呪いによって喋ることができないという彼女。お立ち台に上がり、常時着用の×印マスクを外した瞬間、地鳴りのような喝采に包まれる。ド頭を飾るは、世にバンドの第一歩を記した楽曲『冒険の書1』だ。オートチューンによるロボットボイス的な加工は程よく、彼女の無垢な地声の心地よさも感じさせながら放たれる。パンチライン的にシャウトを放つ“妖精”ことgariもド頭からフルストッルで躍動。続く『my!show!time!』ではグロールを効かせた迫力のシャウトで空気を震わせ、会場の温度を上げて行く。リフトからのクラウドサーファー続出で、開始早々にフロアは揉みくちゃである。ラウドとポップの緩急鋭い『BA・BA・BA ばけ~しょん』では、クールでキリッとしたオーラを漂わせていた美しき“女剣士”の明治(Gt)も笑顔を浮かべ、殺傷力高いギャップ萌えでブッタ斬る。彼女の真っ赤なセミアコがガッツリ歪んだ重厚な音の壁を浴びせれば、“謎のスナイパー”ことウイ・ビトン(Gt)がエッジの効いたソリッドなサウンドを轟かせ、メタリックでバリテクなリードプレイをお見舞い。

初の大舞台O-EASTの広いステージを効果的に、横も奥行きも使って展開する大きなステージングを魅せるメンバーたち。酸欠必至の小箱から、ノットフェス2016といった万人規模の会場まで、結成から4年という短い期間ながらも豊富な経験で培った高いパフォーマンススキルを見せつけ、その上でオーディエンスの合唱や掛け声が反響する大会場の空気感を楽しむ様子も伺わせる。舞台度胸も相当だ。さらに、『アルテ魔ダンテ』でバジルのオラオラなヘドバンが炸裂、と思ったら続く『ハッピーエンドの魔法』では甘酸っぱくてキュートな女の子の世界に染め上げる。急角度のメリハリを伴ったバンドの多彩な表現力は、VJという武器も巧みに操って、息つく暇ないワクワクの連続を作り出す。そして『ヒトリ サク ラジオ』でバンドの世界観はまた新たな次元へ。明治がセンターに立ち、幻想的な映像を背にシットリと歌い上げたワンシーン。温かみのある澄んだ歌声が勇者たちを優しく包み込んだ癒しのひと時となった。

その後メンバーは一時はけ、ステージではオープニング映像の続きが投映される。場面は遂に迎えた“うごく犬のぞう”との戦闘に突入。しかしいきなり瞬殺されるパーティ、そこでオーディエンスの応援を求めるメッセージに。ステージでの映像に向かって大声援を叫ぶ大人たちだが(笑)、彼ら彼女らもまた承知の上で状況を楽しんでいるのだ。冒頭にも述べたが、魔法少女になり隊ファンはとにかくアツい。ラウド、ポップ、ガーリー、ゲームの世界観、様々な側面を持つバンドのどこか一部を切り取ってるわけではなく、丸ごと愛してる様子が伝わる。そんな美しい関係性を感じさせながら、無事“うごく犬のぞう”退治の任務は完了し、ライブは後半戦へと突入する。

インターバルの空気を切り裂くgariのシャウト、激しさ全開のエレクトロニコアナンバー『Call me From Hell』で後半の幕が上がる。『ヒメサマスピリッツ』では扇子を手にしたバジルが艶っぽくもキュートなダンスでフロアを再煮沸。そして、ここからさらになるパーティタイムが加速していく。アニソンカヴァー『おジャ魔女カーニバル!!』ではクラウドサーフ、ヘドバン、そしてヲタ芸と、フロアは様々入り乱れてのお祭り騒ぎ。高速BPMによるキラキラのシンセ音に彩られた『RE-BI-TE-TO』ではバジルとgariのパラパラ先導のもと、ディスコO-EASTが出現。バンドの優れた楽曲構成力やバジルのボーカルスタイルの魅力がじっくり味わえる『first star』は、後半戦に注ぎ込まれた一服の清涼剤となった。柔らかな女の子タッチの映像を背に歌うバジルの可愛らしさが、爽やかで瑞々しい空気を会場全体に行き渡らせる。

「世界一楽しい曲を世界一楽しい空間で演ろうぜ! 踊り狂おうぜ、シブヤー!」
さぁライブは終盤へ。ここまで壮絶な運動量でパフォーマンスしてきたはずのgariだが、キレキレのダンスとキレキレのシャウトが、ここに来てもう一段ギアをアップ。驚異のフィジカルを見せつける。『完全無敵のぶっとバスターX』ではバジルのラップも炸裂し、フロアはタイトル通りのブットビように。そして、攻め攻めメタルナンバーでありながら伸びやかなサビが一体感を呼び込む『願い星』で会場のテンションはさらにピークの更新へと駆け上がる。ステージ最前面に躍り出て居並ぶメンバーの堂々たる姿にしびれ、会場一丸となった大サビでの大合唱は胸を震わす感動シーンに。そして本編ラスト、メジャー1stシングルの『KI-RA-RI』へと繋ぐ。MCなしでここまで約90分を突っ走り続けてきたメンバーたち。アグレッシブであれ終始キュートさを振りまいてきたバジルだが、拳を突き上げるその姿は勇ましく、頼もしさも漂わすカッコイイ魔法戦士の姿に映った。

二階席まで立ち上る熱気を上げながらのハンドクラップに導かれ、アンコールでメンバーが再登場。そしてオーラス『ちちんぷい』で、ついに一つの達成を迎えるメンバーたち。そのキラキラの表情も美しく、極上のポップチューンを自由度高くパフォーマンスする。盛大に巻き起こるオーディエンスの掛け合いも印象的で、バンドが言うところの人が浄化されたエネルギー“ハピネス”に満ちたエンディングを迎えた。

RPG系バンド魔法少女になり隊。そのライブは、オーディエンスを高揚させる様々な仕掛けがひたすら飛び出す無限宝箱のような空間だった。確かな楽曲構成と確かなパフォーマンスというバンドとしての核に加え、コンセプトが彩る魅力的な個性と落とし込まれた世界観。そして何よりRPGのプレイヤーさながらに、明確な形で重要なピースの一つにオーディエンスを据えたライブ空間は、徹底的にファンを楽しませる魅力に溢れていた。アツいファンに支えられているのも納得である。ツアーファイナルを大成功に納めたこの後も、間髪入れずに様々な企画が目白押しの様子。この日は、3/26に都内某所にて行われるという撮影ライブについて、そして4月から放送されるテレビ東京系6局ネットTVアニメ『パズドラ』のエンディングテーマに魔法少女になり隊の楽曲が起用されたというニュースが発表された。あらゆる角度で今の時代にフィットした魔法少女になり隊の、今後さらなる快進撃が楽しみだ。

[TEXT by GO NEMOTO]
[PHOTO by yusuke satou]


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