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LIVE REPORT

Bring the Noise Vol.1

BACK-ON / あっこゴリラ / FAITH

2018 11.11 sun at 渋谷 WWW
open 17:30/start 18:00

ルーツであるロックとヒップホップをつなげていく
2人になったBACK-ONが仕掛けるイベントが始動!

ジャンルレスに国内外問わず、果敢に攻めた活動を繰り広げてきたBACK-ON。しかし、昨年5月に行った結成15周年ライヴにてメンバー2人が脱退し、KENJI03(Vo/G)とTEEDA(MC)の2人体制となった。通常のバンドであれば足踏みしそうな状況だが、むしろ2人だからこそ突き詰められるモノがあると考え、マイナスがあったとしても2人でそこを埋めてやるという強い気持ちでこれまで以上に前のめりになっている彼らがスタートさせた主宰イベントが[Bring the Noise]である。自らのルーツであるロックとヒップホップをキーワードとし、ロックバンドとラッパーを招き、自らがそのハブとなり繋いでいく。その第1回が、ロックバンド枠としてFAITH、ラッパー枠としてあっこゴリラを招き、渋谷WWWにて開催された。

定刻の少し前、ステージに姿を現してセッティングをしっかりと確認してから踏み込んだライヴを披露したのがFAITHだ。平均年齢18歳という若いバンドでありながら、ポップパンクやUSインディーの影響を色濃く感じさせつつも、そこだけに留まらない奥深さがあり、結成から3年ほどとは思えない楽曲のクオリティ。各方面から注目を集めていることも素直に頷けるだろう。
しなやかさと柔らかさを兼ね備え、ときに力強さも見せるアカリ ドリチュラー(Vo)の歌声も素晴らしく、口火を切った『Bana Pla』からオーディエンスを魅了していき、ヤジマレイ(G)のコーラスも相まってドラマティックに響く『September 7th』、アカリに誘われて会場がハンドクラップに包まれた『Damn』と続けてプレイ。メンバーも緊張がほぐれたのか、笑みがこぼれる場面もあり、いいムードが加速していく。
ここでアカリが「大事な第1回目に誘ってもらえて嬉しい」とBACK-ONへの感謝を口にし、続けて「大事な地元を思って書いた歌を」と『Yellow Road』を奏でていく。彼らの地元である長野県伊那市へ思いを馳せたこの曲で舞うようなグッドメロディーを披露し、皆々がそのステージに惹きつけられていった。
また、バンド内の空気の良さを感じさせるアカリとヤジマの楽しげな掛け合いもあったMCからの『Unexpected』は特に印象的。アカリから「みんなで歌える曲を」という言葉もあったが、中盤ではオーディエンスとの大きなシンガロングも生まれ、ヤジマがジャンプした際に転びそうになるぐらいのノリもあり、ライヴがより勢いづいたタイミングにもなった。締めくくりとしては、最初に公開したMVにもなった『Take me away from here』をドロップ。スケール感、クライマックスでの覚醒っぷりも鮮やか。いいインパクトを残していったに違いない。

そして、続くはあっこゴリラ。ドラマーからラッパーへ転身してそれほど長い年月が経っているわけではないが、ヒップホップシーンを席巻する存在だ。17年には日本初のフィメールのみのMCバトル[CINDERELLA MCBATTLE]で優勝を飾り、KENJI03が彼女のことを知るキッカケにもなった[フリースタイルダンジョン]にも出場。今年12月には新作[GRRRLISM]の発表を控えていることもあって、どんなステージが繰り広げられるのか多くのオーディエンスが息を呑んで待ち構えていたところ、フロア後方から「こっちだよー!」と大きな声が聴こえてくる。ふと見れば、そこには満面の笑みで手を振るあっこゴリラ。実にニクい登場の仕方だった。
そのまま矢継ぎ早に言葉を飛ばしながら、オーディエンスを煽り、そのままフロア中央へ移動しつつ『ゲリラ』を披露。あっこゴリラを中心とした渦が巻き起こり、会場の温度も急上昇を描いていく。ステージに戻ってからもその勢いは衰えることなく、常にフロアへエネルギーを投げかけながら『地球の歩きかた』を投下。ライヴ中、「こんな感じでどんなジャンルの壁も突破していく」と口にしたが、その言葉に違わぬパフォーマンス。しかも、どこまでもハッピーなバイブスを撒き散らし、誰ひとり置いていこうとせず、引っ張り続ける。
「この3分間だけは、みんな元バスケ部スタイルで!」とアジテートして『電光石火』に入れば、そのエンターテインメントさはより激しく加速。今回、サポートメンバーであるBNNZ(バナナズ)も勢揃いで臨んでいたが、その連携がどんどんと発揮されていく。曲が展開していく流れでBNNZのメンバーもマイクを握り、熱気を高めていけば、あっこゴリラはドラマーとしてリズムを刻む場面もあり、どこを切り取ってもハイライトなシーンが続いていくのだ。
当然、フロアからは常に歓声が湧き、おそらくヒップホップのライヴを初体験したであろうオーディエンスも手を高く掲げる。そんな一体感が爆発したのが『エビバティBO』だ。あっこゴリラはオーディエンスから3人をステージへと招き、共に踊り、肩を組んで歌う。押し付けるような空気は微塵もなく、ただただハッピーな空間が広がっていった。リリック通り、”ナチュラルボーンエンターテイナー”にふさわしい姿でしかない。その後は新曲『オーバー・ザ・ボーダー』でグッと踏み込み、「言いたいことはひとつ。男の子、女の子、性別、国籍、年齢、全部超えていこうぜ!」と宣言してから『ウルトラジェンダー』でフィニッシュ。エネルギッシュに飛び跳ね、上着を振り回し、どこまでもピースフルで多幸感に溢れた一撃を繰り出してくれた。

トリを務めるBACK-ONは、まずは2MCスタイルで『Bring the Noise』から『Clown』を轟かせ、大歓声を浴びながら抜群のスタートダッシュを決める。約10年ぶりであるという主宰イベントのステージだけあって、気負う部分もあったに違いない。だが、それを跳ね除けてガツンと踏み出せるのはやはり素晴らしい。
KENJI03がギターを手に持ち、「全員でアガりましょう!」と声をかけてから『Carry on』へ。KENJI03の歌う温もりと優美さを併せ持つメロディー、心地よい浮遊感のあるTEEDAのラップというコントラストも鮮やかな曲だ。以前とは違い、ステージ上にはKENJI03、TEEDA、サポートドラマーのみの編成。だが、そこに物足りなさはない。2人ともステージの広さを上手く使い、オーディエンスとの細やかなやり取りをしつつ、熱気を撹拌していく。そのスタイルが新しいBACK-ONの形としてしっかりと成立しているのだ。

そんないいムードをさらに高めようと意気盛んに『Switch』を叩きつけ、KENJI03の「OK! もう一発いこう!」と『Lough now』と続いた流れも秀逸。ズシンとくるヘヴィさもあり、バンドサウンドとしても申し分なしの出来栄え。オーディエンスを飲み込まんばかりのドライブ感も凄まじく、会場をかき回していく。
ここで改めて集まったオーディエンスと出演者へ「ありがとう!」と感謝しつつ、FAITHについてTEEDAが「もうね、爽やかさが違う!」、あっこゴリラにはKENJI03が「(登場の仕方が)もうヤバかったね! レスラー並の、ブルーザー・ブロディ並にワーッとなって」とプロレス好きらしい表現で、高ぶった気持ちを言葉にする。2人のくだけたMCで少しばかり緩やかな空気になったかと思いきや、まだライヴは中盤にも関わらず「ここからノンストップでいくんで!」とKENJI03が宣言し、再び戦闘態勢で『STRIKE BACK』へなだれ込んでいく。ノリの良いロックサウンドから、一気にキレッキレのラップへ切り替わり、他にはないBACK-ONならではの世界観が堪能できる曲であり、フロアからは無数の拳が突き上げられる。そこから続けざまに放たれた『セルリアン』のリリックにあるように、”限界なんて無い”のだ。天井知らずの盛り上がりは本当に心が熱くなった。

もちろん、ノンストップでいくという言葉通り、まだまだその攻勢は止まらない。再び2MCスタイルでダークな雰囲気をまといながら色彩豊かな『Misty rain』を披露したかと思えば、KENJI03が再びギターを持ち、重厚なビート、ラップとハイトーンの歌声のコントラストが秀逸だった『Chain』、緊張感のあるTEEDAのラップもグッときた『New world』、煽る前からオーディエンスが飛び跳ねまくっていた『Butterfly』と曲のチョイスも絶妙であり、熱が冷める瞬間が一切ない。そのまま、温かく包み込む『Flower』を最後にドロップし、猛烈に熱い夜を見事なフィナーレを飾った。

幕が下りた後もオーディエンスは大きなコールを送ったが、「対バンにこだわったので平等にいきたいと思います」とKENJII03が告げたようにアンコールはなし。この[Bring the Noise]はゲストを招いたイベントという見方もできるが、やはりそこは三つ巴の真っ向勝負。BACK-ONがこのイベントに懸ける強烈な想いがビシビシと伝わってきた。

[TEXT by ヤコウリュウジ]
[PHOTOS by 川澤知弘]


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