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LIVE REPORT

ビッケブランカ ワンマンサーキット

! Kick-Start ! Vicke Blanka

2012.12.15 sat at 渋谷スターラウンジ
open 17:30 / start 18:00

記念すべき初のワンマンライブ!
ポップの魔術師ビッケブランカが挑んだ90分魅惑のステージ!

 初のワンマンライブ。これに挑むミュージシャンの喜びや気負いは相当なものであろう。この日のビッケブランカも、初っ端にて独特の名古屋弁でこう客席に告げていた「正直に言っとかな、あかんなぁと思うことがあるんですが、緊張してますわぁ。こんな気持ちはねぇ、読書感想文読まれる時ぐらい。そんぐらい遡りますわ。もんすごい緊張してます。なんだろこれって感じですわ。」この言葉が示す通り、この日の彼は緊張していたのであろう。ステージ全体を通して、相当の気負いが感じられた。MCの時こそ、彼のその人懐っこいキャラクターと持ち前の明るさでお客を湧かし、リラックスした風を見せていたが、曲に入れば、大きな集中力と気迫を感じさせる。まさに迫真のステージだった。

 午後六時過ぎ、定刻を少し過ぎたステージにSEが流れ始める。バックバンドのメンバーが登場。少し間を置き、本日の主役、ビッケブランカも登場。彼がSEの音を止める合図とともに、奇襲のようにバンドが音を鳴らす。この日のオープニングは彼のテーマソングでもあるナンバー”VBのテーマ”。ハンドマイクで、所狭しと軽快なリズムに載せて歌いだす彼に合わせて、フロアを埋めたお客さんからも大きな歓声と拍手が起こる。間奏部分から、ビッケブランカの弾むピアノサウンドと共にライブは本格的にスタート!間髪入れず、ピアノフレーズが印象的なナンバー” Wake Up Sweetheart”へと突入。爽快で透明感のあるピアノポップを会場に響かしていく。こうして会場が暖まったところでMCを挟み、文章冒頭で述べた、緊張している旨をお客さんへと伝え、会場を沸かすと「最後まで楽しませる準備はいっぱいしてきたから、最後まで楽しんでください。よろしく~!」とフロアへと言葉を投げる。

 すぐさま珠玉のラブソング”アイライキュー”へとなだれ込む。ミドルテンポのナンバーが会場を揺らし、包んでいくと、次曲である”sorrow sorrow”では彼のメローな歌声につられ、天井へ向けて手をあげるファンも。その流れのまま、アコースティックナンバー”さよならに来ました。”。曲を追うごとにスケール感が上がり、壮大さを増していく彼の歌声。そしてその歌声を支えるバンドサウンドも非常に心地よく、お客さんにはどこかピースフルな空気も漂い、会場は非常に良い雰囲気。

 そんな中、短いMCを挟み、ビッケブランカとワンマンツアーを共にするサポートメンバーをここで紹介。「いつものライブだったら、ここでビッケブランカでしたって帰っちゃうんだけと、今日はまだまだ続きます。」とライブは中盤戦へ。次に披露された”秋の香り”では楽曲中盤でコール&レスポンスを挟み、客席のテンションは一気に高くなっていく。そんな雰囲気をガラリと変えるかのように、静かなピアノのイントロから始まるスローナンバー、”グッド・シェパード”。彼の突き抜けるような歌声が会場を震わせる様は美しい光景であった。

 こうして2曲をあっという間に歌い上げると、彼が「みなさん、今日は楽しみにしてくれたんですかね?」と客席に問いかける。すると客席からは大きな拍手が起こり、「こう言ってもらえると嬉しいですね。準備してきた僕らも披露しがいがありますね。」と、また彼は語りかけ、「みんながどんな顔してるのかな?」と客席をジッと見つめる。「色々な顔が見えますね。こうやって知らん人がようけ集まって、一個のことができるって、おもしろいですね。今みんなとこうやっとって、すごく楽しいです。」客席とコミュニケーションをとる彼の顔はどこか照れくさそうながらも、非常に充実感を感じさせる笑顔であった。ここで、もう一度メンバー紹介をすると、バックバンドのギターを担当していたコジロウが、客席に語りかけるビッケブランカに対して、サンプラーの音を鳴らして邪魔をするというコント!?のようなものを挟み、笑いを誘い、客席を再び沸かす。そのまま”ユー、チック、オーバー”へとなだれ込めば、”ココラムウ”、”アシカダンス”とアップテンポのナンバーを3曲続けてプレイし、ライブ後半戦を多いに盛り上げていく。体を大きく揺らす者、ジャンプしている者、お客さんがそれぞれの楽しみ方で盛り上がっているのが印象に残った。そうしてライブハウスが最高潮に達した所で、幻想的で宇宙を思わせるようなサウンドを鳴らす”Star Charter”が演奏され、ライブが終幕に向かっていることを知らせるかのように、切ない雰囲気を会場に生み出していく。
 「ここまでお付き合いありがとうございます。次の曲で最後です。」と彼が挨拶をすると、フロアからは「え~」という声が一斉にあがる。そして彼は再び語りだす。「”ありがとう”という言葉がありますが、ありがとうという言葉は日常のどの場面でも使う言葉でしょ?だから、みんなが俺の曲を聴いてくれて喜んでくれてる今の状況に対しては、もっと違う特別な感謝の言葉があると思うし、もっと大きい愛を表す言葉が必要だと思うんです。」そう彼は語り、集まってくれたお客さんに対して、感謝してもしきれない気持ちを伝えていた。そして彼はこう言い放った。「とりあえず、一言だけ言いたい。今日は集まってくれてありがとうございました。」この瞬間、客席からは笑いと、この日一番の大きな拍手が同時に起こり、この日のライブの成功を感じさせる一瞬であった。
 暖かい雰囲気の中、美しいピアノの伴奏が奏でられ始める。最後の曲に選ばれたのは、まさにこの日にピッタリとも言うべき曲”この幸運な日”。一音一音を大切にするかのようにピアノを鳴らし、誇らしげに歌う彼の姿は、非常に頼もしくもあり、貫禄さえも感じさせた。こうして彼が最後の曲を歌い上げると、彼は余韻を楽しむ間も無く、一瞬でステージを去っていった。
 彼がステージを去った後、客席からはもちろんアンコールを求める声が上がり、それに応えるように、再び、本日の主役、ビッケブランカがステージに登場。「アンコールありがとう。じゃあさっそくいくわ。」と、”Flash Love”。彼の力強い歌声を再びライブハウスに響かせていく。歌い終えると、彼はまたお客さんに向かって感謝の言葉を述べると、サポートメンバーに自分についてのコメントを求め、笑いを誘っていく。「今日はみなさんに僕の情熱伝わりましたでしょうか?いろんな想いを曲にしたり、いろんなイメージを曲にしてね、そういうことしか僕できないですから。僕は音楽を作って歌うことしか、できないですから。他のことは人並みちょい上くらいですけど(笑)だけど、音楽に関しては自信持って、聞いてくれって言えるんです。そんな自信をこの長い僕の人生の年月で培ってきました。それを今日はみんな感じてくれましたか? ありがとうございました」と最後の挨拶を述べると、この日、最後の曲”Remedy”が演奏される。次第に熱を帯びていくこの楽曲は、曲のアウトロ部分で繰り広げられる、哀愁漂うピアノフレーズとギターソロのせめぎ合いが気持ちよく、その勢いのままこの日のライブは幕を閉じていくのであった。
 
 最後の曲の演奏が終わると、本編終了時と同じように、余韻を楽しむことも、感じることも無く、彼は足早にステージを去っていく。その姿は、ここで余韻に浸っている場合ではない、まだまだ自分は前に進んでいかなくちゃならないという彼の意思表示であったかのように思えてならない。この日のステージは彼の人柄が映し出され、また彼の音楽に対する情熱とストイックさを強く感じさせるライブであった。しかし、彼の壮大なスケールを持つポップソングは、まだまだ大きな会場が似合うし、彼はもっと大きな場所でのライブをいつか実現するに違いない。ビッケブランカの旅は始まったばかりである。

[TEXT by Kuwata Kousuke ]



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